小児クリニックたまなは(沖縄県那覇市)

アレルギーについて

アレルギーとは何?

アレルギーとは、一口に言えば過敏症の事を言います。例えば、ダニや花粉など身の回りの物に対しての過敏に反応する人,卵や牛乳など日常普通に食べている食物に対して過敏に反応する人などがいます。アレルギー反応の仕組みは色々なタイプが言われていますが、えび、カニ、イカ、タコなど魚介類に対するアレルギー反応は良く知られた事ですよね。

アレルギーを持っている人はどれ位いる?

厚生省の調べでは、日本人の約3人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っていると言われています。皮膚にアレルギー症状が出たものが、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹で、鼻に出たものがアレルギー性鼻炎、気管支・肺に出たものが気管支喘息です。

なぜアレルギー疾患が増えてきた?

3つの急激な社会変化が主な原因と考えられています。
①日本人にとって不適切な食生活です。急激な食事の洋風化や大量の食品添加物などがあります。
②住む環境の変化です。ダニが発生しやすい密閉した家造りや車の排気ガスなどの大気汚染などがあります。
③忙しさのために生活のリズムの乱れがあります。精神的、肉体的ストレスが加わり、自律神経やホルモンのバランスが崩れ易くなっています。
その中で私は、特に日本人の食生活の変化に注目しています。1960年代からインスタントラーメンが普及し、防腐剤、着色料などの食品添加物の使用量が急激に増加しました。又ハウス栽培も盛んになり、季節を無視した食材が手に入るようになった背景には、農薬や化学肥料の使用が一般的になっています。又、現在は飽食の時代と言われており、高蛋白、高脂肪、糖質の過剰摂取が目立ちます。
従って、日本人が本来持っている消化能力以上の過剰摂取とインスタント食品などによるビタミン・ミネラルの欠乏、そして食品添加物・農薬などの化学物質による汚染が複雑に影響して免疫能の変調が起こり、体質が過敏となるアレルギー疾患が多く見られるようになったと考えています。

どのような指導や治療をされていますか?

まず、アレルギーの血液検査をしています。特に卵、牛乳、小麦、大豆、そしてダニをチェックしております。しかし、検査の結果は、7割ほどしか症状と一致しません。 そこで湿疹の分布状態やこれまでに起こった湿疹悪化のエピソードなどを参考に悪化原因を探して、乳幼児にはできる範囲で除去食などを指導しています。
また、漢方学的には、胃腸系と肺、鼻、そして皮膚はお互いに密接な関係があります。従って、子供たちが冷蔵庫から出したばかりのよく冷えたものを口にしていますが、胃腸を冷やして消化能力を低下させていますので、冷たいものを控える事と胃腸を丈夫にする漢方薬を服用させ、免疫を高めるよう試みております。
もちろん、スキンケアは欠かせません。ステロイド軟膏、非ステロイド軟膏、保湿剤など色々工夫して使用しています。

他に気をつけなければならないことは?

忘れてはならない二つの食物があります。
一つは「油もの」です。てんぷら、カツ、フライドポテト、ドレッシング、スナック菓子など、ほとんどの植物油はリノール酸を多く含んでいますが、これが過敏症を増強すると言われています。従って、油ものを控えめにする事は当然です。 一方、魚油、海藻、根菜やしそ油は、アルファ・リノレン酸を豊富に含み、体内でアレルギー反応を抑制するEPAやDHAに変化します。一般的に手に入りやすく、比較的アレルギーに優しい油として菜種油、胡麻油、オリーブ油も勧めています。また添加物が多い植物性のマーガリンよりは良質のバターの方が、牛乳アレルギーがなければ体には良いと思っています。
二つ目は砂糖です。甘い物を食べた後に、決まって痒みが強くなり症状が悪化したと言う訴えはよくあります。腸管での異常発酵やカルシウムの消費を早めたり、又イースト・コネクションと言って、カビの一種であるカンジダが糖質をえさに消化管で増殖し、その毒素で免疫を狂わす事も言われています。従って、清涼飲料水、ジュース、果物、お菓子などを取り過ぎない事です。特にチョコレートは禁忌です。

最後に付け加える事がありますか?

「すべての治療法に意味があり、すべての治療法に限界がある。」とあるドクターが言っておりましたが、これが本音だと思います。しかし、昔から「医食同源」と言われるように「食」を抜きにしては、どんな治療法も半減してしまいます。体を鍛え、いらいらせず、くよくよせず、ゆったりとした気持ちで、規則正しい生活に心がける事が、アレルギー疾患を克服するのに大切な事と思います。

子どもの食物アレルギー(除去食療法)

卵や大豆などの食物アレルギーは年令とともに消える? できれば普通の食事をとらせてあげたい。

食物アレルギーの7割の子どもが、3歳までに普通食をとれるようになり、小学校前には、ほとんどの子どもがとれるようになると思います。 食物アレルギーには、いくつかの病気や症状があります。
①じんま疹
②気管支ぜんそく発作
③消化不良や下痢などの消化管アレルギー
④命にかかわるアナフィラキシーショック
⑤アトピー性皮膚炎(以下アトピー)
最近では、特に乳幼児アトピーの原因のひとつとして食物アレルギーがあり、原因と考えられる食物の除去食療法が一般的に行われています。

原因となる食物を探すには?

原因と思われる食物を食物抗原(こうげん)と言いますが、食物日誌をつけたり、血液検査、皮膚テストが手軽な検査です。特に血液検査ではRAST(ラスト)検査が一般的に行われていますが、注意する点があります。反応の程度でクラス0から6まで分けていますが、実際の症状と検査の程度が一致しない場合が少なくありません(3割程度)。従って、検査の数値のみで食物アレルギーの程度を判断すると誤った診断となることがあります。
その点、実際に食物抗原を与えて、症状の発現を観察する事で食物抗原を絞り込む食物負荷試験があります。ただし施行のポイントは、食物抗原と疑われる食物を2週間ほど完全に除去し、症状の軽快を見た後に食べさせる事です。除去する事をせずに、すぐに食物抗原を与えても、はっきりした症状の悪化を誘発できない場合があるからです。

除去食はいつまで必要?

除去食を始めますと数週から数ヶ月間は、過敏の状態が起こります。例えば卵を食べてもさほど症状に変化がなかったのが、卵除去を開始したら、むしろ少量の摂取でも症状の悪化が起こるのです。その後数ヶ月から数年間にわたり、ある時は過敏に反応し、ある時には症状の悪化が起こらない不安定な時期を過ごします。 従って、除去食の解除は、開始より数ヶ月から数年後の症状が軽快した安定期(耐性期)に行います。

除去食の解除の方法は?

卵は、加熱した黄身をひとかけら与え、15分ぐらい観察し変化がなければ黄身の半個を与え翌日まで観察します。特に問題なければ一日一回黄身の半個を連続3日間与え、その後は全卵を同様に試みます。合格すれば週に2個程度はOKとしますが、テスト途中で反応があれば、3~6ヵ月後に再度テストします。牛乳も50mlから、大豆も豆腐50gまたは納豆50gからテストを同様に行います。
本来なら入院させて除去・負荷試験をした方が、患者側も医療側も安心して行えますが、現実問題として軽症の例では家庭で行うのが一般的です。

解除後の経過は?

特に問題なく食べられる人、時にじんましんが出たり、アトピーの症状が悪化したりする人、なかなか解除できない人がいます。特にアナフィラキシーショックを起こす人は、いつまでも解除達成が困難な場合があります。
軽症の食物アレルギーの人は、食前に服用するインタール(アレルナート)というアレルギー反応を予防するお薬を使用する事もあります。